駿以外の誰かを好きになることなんてない、ないよ。
あたしは何度も、心の中でそう言い聞かせるけど。
未亜は楽しそうなまま、そっと口を開いた。
「ねぇ凛夏」
未亜は、あたしの手をそっと触れて。
「そこまで駿くんを好きでいなくちゃいけない理由って、あるかな?」
その言葉を聞いたときは、なにか大きな衝撃を受けた気がした。
理由…――。
駿を好きでいなくちゃいけない、理由…?
あたしは未亜の瞳を見たまま、話の続きを聞く。
「凛夏はきっと、怖いんだと思うの…駿くん以外の、ほかの誰かを好きになるのが怖いの」
あたしの手を握ったまま、未亜は続ける。
「駿くんを好きでいれば傷つくけど…でも傷つくことは分かってるから、だからいざ傷ついたときでも“こうなることは分かってた”って…凛夏は優しくて明るいから、そう開き直れちゃうでしょ?」
その言葉は、あたしの脳内にしっかりと入ってきて。

