楠森から発されたのはどう考えても女だと分かる名前で、俺は思わずその背中へ視線を動かした。 彼女、いたのか。 さっきまで必死に東条の誤解を解こうとしていた俺が、なんだかバカバカしく思えた。 コイツにとっては、もう東条のことなんかずっと昔の話で。 気にしていたのは俺だけだったと思うと。 気が軽くなったような感覚と同時に…俺の知らない楠森を知った気がして、何かに拒まれた感覚もした。 「このあと?うん分かった、いいよ、じゃあね」 楠森はそれだけ言うと、スマートフォンを耳から離す。