真っ直ぐに見つめられて、あたしは目をそらすことができなくなる。


肩を掴まれたまま、見つめられたまま。


あたしはその瞳に吸い込まれて。


「…いいから黙って聞いとけよ…」


力強い言葉と、肩を掴む大きな手。


ただずっとあたしを見続ける、その瞳。


深い赤色のマフラーが、あたしの身体を温めて。


「俺は明日から浮気相手として…今まで以上にお前に関わるから」


――もう既に、あたしの中で大きな存在になっていたことに。


このときのあたしは、全く気がつかなかったんだ。