サキさんが電話をしている間、
私は作業をしているフリをしながら、
サキさんのコーディネートを考えた。
実際、絵になる人だから、こういうことをするのは、楽しい。

せっかくスラッとしているから、パンツは細身がいい。
だったら、上半身は少しボリュームがほしい。
暖色?寒色?
靴はどうかな。ゴツくないのがいい。

私がそうやってひっそり楽しんでいると、
背後に気配を感じた。

「リク、俺の名前の話、したっけ?」

振り向こうとしたけれど、
サキさんが予想以上に近くにいたから、
少し戸惑い、そのままでいることにした。

「お母さんの、お話ですね。
聞きました。」

何度も聞いてます、と心の中で呟いた時、
その声に重なるように、
サキさんが言った。

「母親が、逝っちまったらしい。」

慌てて振り向いたそこには、
見たことのない表情のサキさんが、いた。