「お疲れさまでーす」
棚からお酒のボトルを
取りに来たみたい。
「疲れた?」
「...疲れました」
「しっかりしろよ〜」
笑いながら答えたあたしのおでこに
佐野さんが軽くデコピンしてきた。
「...頑張ります」
「じゃーな。お疲れ〜」
「...」
パタンと扉を閉めて行ってしまった。
更衣室にひとり残されたあたしは
さっきのおでこの感覚を思い出して
にやけてしまった。
昔から恋愛体質、というか
少しでも好意を見せてくれる人を
気にしてしまうあたしだったけど
最近は磨きがかかっている気がする。
佐野さんのことは
恋愛として好きとかじゃないけど、
バイトの先輩としてすごく頼りになるし
少し気になってるのかもしれない。
クラブで数ヶ月前に
知り合った男の人のことが好きで
そのとき付き合っていた彼氏と
別れたはずなのに、
あたしの感情の変化は自分でも
呆れるほどに早すぎる。
