「先生、ありがとうございました。」

お礼を言って、見送ろうとすると

「いや、家入りな。危ないから。」

そういって、気遣ってくれた。

「じゃあ、さようなら。」

「うん。また明日。」


かちゃ、とドアを閉める。

やっぱり、言えなかったか。

父親の不倫以外に、わたしにはもうひとつ、人に言えない、家庭の事情的なものがある。

不倫よりも、重たくのしかかる・・・・

それは

婚約までしていたお姉ちゃんが、死んでしまったこと。