「全然バカにしてなかったよ。気にしてくれて、ありがとう」
「うわ、めっちゃいい子じゃん。あたしのほうこそ、勘違いしててごめんだよね」
いきなり抱きつかれた。勢いのある人なんだなあ。
髪の色はどちらかというと派手だけど、全然悪い感じはしない。むしろ、すごくいい人そう。
もっと早く声をかければよかった!
小中とずっと自分から声をかけてたはずだったのに、忘れてた。
「クミ、怪力で武内さんがやられる」
「うっさいなー。中学のときから握力あたしより弱かったやつは黙ってて!」
「それまったく関係ないから」
「関係ある。ね、杏子」
同意を求められても困ってしまう。さあ、と言うように首を傾げると「そこはのっとくべき!」とクミちゃんに怒られた。
椎名くんは、呆れたように笑っている。中学からの仲よしな子がいて、うらやましい。
でも、いなくてもやっていけるかな。
あれだけ悩んだことが、一瞬で解決するなんて思ってもみなかった。



