鋭い彼等のことだから

「いやそういうことじゃなくてね。……たまには丼とか定食とかでちゃんと食べないと。この仕事なかなかハードなんだから」




皐月は県内の総合病院に務める看護師である。高校の看護科を卒業し、大学の看護学科に二年在籍した後、今年から正看護師として働くことになった。準看護師だったときに比べ、仕事内容は多い。

 皐月はにぱっと笑う。




「大丈夫大丈夫!家でたくさん食べてるから」




「そう?でもちゃんと食べなよ?さっきーめっちゃ働いてるし。時間ないのはわかるけどさ」




「篠崎さんは今から?」




「そうそう。いつもなら牛丼とかいっちゃうんだけどね。でも今日は初めてのオペ室だったから。きつねうどんにしとこうと思ってて……」




皐月は苦笑する。




「懸命な判断だね」




 一人の女性が、二人のもとに牛丼ののったトレーを持って近づく。女性看護師、篠崎はその存在に気付いた。




「あ、お疲れ様でーす」




篠崎が見る方向に、皐月も視線を向けた。きれいな大人の女性。たれ目で非常に優しい印象をかもし出す。後ろで無造作に結ばれた髪の毛。白衣を着た彼女の首からかかっているネームプレートで、医師と紹介されていた。そういえばるりは、この女性のことを化け物と言っていたなと皐月は思った。




「篠崎さん、オペ室お疲れ様ぁ」




のんびりと話す。少し独特なお医者様だ。




「ありがとうございます。……って」




篠崎は牛丼をまじまじと見つめる。信じられないというように女性を見た。




「仲河先生……。オペ室立ち会ってましたよね……」




「そうよぉ。でもオペって疲れるでしょ?オペの後はお腹すくのよ。オペ後だからどうのなんて言ってられないわぁ。オペって慣れよ、慣れぇ。」




最後に小さい声でぼそっと呟いた。




「……オペオペ言い過ぎてオペの意味がよくわからなくなったわぁ」