鋭い彼等のことだから

「うん」




何食わぬ顔をしているるり。なるみは少し戸惑っているが、みおはもう慣れてしまっていた。




「じゃね」




テーブルの上のごみをまとめて拾い、かばんを肩にかけた。颯爽と歩いて、ゴミ捨て場でごみを捨てた後、外へでるドアへと向かった。二人はそんなるりの背中を見つめる。外へ出て行ったのを確認した後、みおは口を開いた。




「……でも次の講義実技じゃなくない?」




「うーん……。るりちゃん末永先生のこと苦手だからかな……」




「まあ確かにそれもあるけど……。でもそれだけで休むような子でもなかったような……。やっぱり最近虫の居所が悪いのかもよ、るりちゃん」




結局、所詮、他人事。学校生活で心配こそすれ、るりのプライベートに関与することはない。るりが家に帰って何をするのか、どんな家族がいるのかなんて彼女達は知らなかった。……し、るりも自分から話すことなどなかった。もちろん聞かれたからには答えるのだが。彼女達にとってるりの私生活は謎だったし、るり自身ミステリアスな自分のイメージに酔っていたのもあるだろう。そして恋人と暮らしている事実を隠すこともまた、彼女は楽しんでいたのである。


 二人が彼女の私生活についてよく知らないように、恋人である皐月も、るりの学校生活についてはよく知らなかった。


     *


 「さっきーっていっつも売店のおにぎりじゃない?」




つかの間の休憩中に昼食をとる。食堂には、同じく休憩を利用して昼食をとろうとしている看護師や医師を多く目にする。皐月は食堂のすぐ隣にあるコンビニで買ったおにぎりを食べていた。髪色が少し明るい茶髪の女性看護師が、通りがかりにそれを不思議そうに見る。皐月はきょとんとした顔で答えた。




「……たまにパンも食べるよ?」