夕方までにるりが帰ってきたらいいけどな。きっとまた中央街でさまよい歩くのだろうな。るりは寂しがり屋さんだから。だから猫じゃない。兎なんだ。他の人に抱かれてほしいわけじゃないけど……体は大切にしてほしいな……。


 皐月はそこで考えることをやめ、眠りにつく。


 おやすみ。せめて夢の中では安定された幸せな世界へ。彼等の生活はこんなものだ。彼等の生活は続く。こんなものが虚しいだなんて気付きもしない。彼等はこれが幸せだと信じ込んでいるから。彼等の同棲生活は、そんじょそこらの若者カップルのようないちゃいちゃしていつかは結婚しようねなんて生ぬるく甘いものじゃない。どのカップルよりも繊細で、隠し事が多くて、時たま鋭く傷つけ合う。そして彼等はそんな毎日を幸せなのだと疑うことなく、深く深く溺れていくのだった。