それは病気の域に達しているほどに。
彼女は気付けば中央街にいる。中央街には彼女を疎ましく思う者もいれば、彼女をどうしても買いたいと言ってくれる者もいる。別に今、幸せでないわけではない。皐月との生活に不満を持っているわけでもない。彼女の心には埋められない溝があって、それを埋める作業に夢中なのだ。ただただ必死に、埋めようとしている。その溝を埋めるには皐月だけでは不十分であるだけなのだ。それだけでなく、彼女は自他共に認める淫乱だった。自分の求める快楽を素直に受け入れる性質だった。だからこそ彼女は様々な男に愛される。皐月に対しては大きな裏切り行為であったし、彼女もそれは理解していた。だが、彼女はそれでもやめなかった。彼女は自分の体を求めてくる男を求めてしまっていた。そこには愛情なんてものはない。彼女の根底にあったのは、快楽的欲求そのものだったのかもしれない。そんな彼女に対しては、かわいそうだとか体を大事にしろだなんて言葉は余計なお世話であり、むしろそんな言葉をかけられるに値しないほどだった。
皐月には一度も抱かれたことはない。皐月も、彼女が何をするにも初めての女性で、だからこそ心底大事にしている部分があるのかもしれない。キスどころか、手をつなぐことも容易ではない。
今日もまた、皐月の気持ちを踏みにじりながら、青姫ことるりはたったの二万円で、よく知りもしない男に体を好きなようにされる。二万円で欲望のままに自分の体で遊ぶ男より、自分のことを甘やかして愛してくれる皐月の気持ちや愛情が、るりにはよく理解できていなかった。
*
今日は日勤で、夕方には帰ることができた。看護師は勤務体制が少しきついこともあり、なかなか家族と一緒にいれる時間がない。できる限りるりと一緒にいたい皐月にとっては、仕事に誇りを持っているとは言え、仕事に縛られたくはなかった。
時間は夜八時。るりの帰りは遅い。ラインには、今日はご飯食べてくる、とあったため、用意はしていない。るりと一緒に過ごしたいはずなのに、肝心のるりが遅くまで帰ってこない。皐月は、二人の家で、一人で過ごす。夜勤や準夜勤であったとき、帰るのは朝か深夜になる。そんな時、皐月はるりがなんだかんだ言いながら寂しがっている様子を想像しては微笑ましく感じている。しかし自分が家で一人になってしまうと、寂しがり屋なのは自分のほうなのではないかと呆れてしまう。時々不安になってしまうのは、なぜなのか。皐月はるりのことを信じていた。皐月はるりを愛してる。るりもまた同じくらいには愛してくれている。それだけでよかった。
彼女は気付けば中央街にいる。中央街には彼女を疎ましく思う者もいれば、彼女をどうしても買いたいと言ってくれる者もいる。別に今、幸せでないわけではない。皐月との生活に不満を持っているわけでもない。彼女の心には埋められない溝があって、それを埋める作業に夢中なのだ。ただただ必死に、埋めようとしている。その溝を埋めるには皐月だけでは不十分であるだけなのだ。それだけでなく、彼女は自他共に認める淫乱だった。自分の求める快楽を素直に受け入れる性質だった。だからこそ彼女は様々な男に愛される。皐月に対しては大きな裏切り行為であったし、彼女もそれは理解していた。だが、彼女はそれでもやめなかった。彼女は自分の体を求めてくる男を求めてしまっていた。そこには愛情なんてものはない。彼女の根底にあったのは、快楽的欲求そのものだったのかもしれない。そんな彼女に対しては、かわいそうだとか体を大事にしろだなんて言葉は余計なお世話であり、むしろそんな言葉をかけられるに値しないほどだった。
皐月には一度も抱かれたことはない。皐月も、彼女が何をするにも初めての女性で、だからこそ心底大事にしている部分があるのかもしれない。キスどころか、手をつなぐことも容易ではない。
今日もまた、皐月の気持ちを踏みにじりながら、青姫ことるりはたったの二万円で、よく知りもしない男に体を好きなようにされる。二万円で欲望のままに自分の体で遊ぶ男より、自分のことを甘やかして愛してくれる皐月の気持ちや愛情が、るりにはよく理解できていなかった。
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今日は日勤で、夕方には帰ることができた。看護師は勤務体制が少しきついこともあり、なかなか家族と一緒にいれる時間がない。できる限りるりと一緒にいたい皐月にとっては、仕事に誇りを持っているとは言え、仕事に縛られたくはなかった。
時間は夜八時。るりの帰りは遅い。ラインには、今日はご飯食べてくる、とあったため、用意はしていない。るりと一緒に過ごしたいはずなのに、肝心のるりが遅くまで帰ってこない。皐月は、二人の家で、一人で過ごす。夜勤や準夜勤であったとき、帰るのは朝か深夜になる。そんな時、皐月はるりがなんだかんだ言いながら寂しがっている様子を想像しては微笑ましく感じている。しかし自分が家で一人になってしまうと、寂しがり屋なのは自分のほうなのではないかと呆れてしまう。時々不安になってしまうのは、なぜなのか。皐月はるりのことを信じていた。皐月はるりを愛してる。るりもまた同じくらいには愛してくれている。それだけでよかった。
