鋭い彼等のことだから

「そうですか?っていっても産婦人科ではやることそんなにないですよ?中絶された胎児の処理とか、手術道具の消毒とかです。小児科が一番忙しいかな。精神科は病棟での仕事が厳しいだけで特には」




「うふふ……頑張り屋さんなのねぇ」




「いやそれほどでは……」




皐月は食べかけのおにぎりを頬張った。和歌子は眉をひそめる。




「……最近ちゃんと食べてるのぉ?」




「食べてますよお」




皐月は少し茶化すように笑う。そんな皐月に軽くため息をついた。




「るりちゃんばっかりにおいしいもの食べさせてるんじゃない?」




皐月はおにぎりの残りを口に入れた。頬が膨らみ、むぐむぐと効果音が聞こえてくる。




「るりちゃんのこと大事にしてくれてるみたいだから。それは私としても嬉しいことよ?でもやっぱり皐月くんのことも心配よぉ。少し働きすぎじゃない?看護師長には私からも言っておくから。少しは仕事セーブして……」




和歌子の話を、手のひらを突き出すことで静止させた。咀嚼したおにぎりを飲み込む音が聞こえる。皐月はにぱっと笑った。




「大丈夫です。好きで働いてるので」




「……そぉ?」




「それにるりちゃん養うためには稼がなきゃですしね」




いや、親じゃないんだから……と和歌子は呆れていた。皐月の話を聞きながら箸をすすめる。




「るりちゃんには健康的なもの食べさせたいですし。ちょっとした贅沢もさせたいんですよ」




「…そう」




「るりちゃんまだ学生だし。俺を頼ってくれてるわけだから。できるかぎりのことはしてあげたくなっちゃうんですよね。俺が作ったお弁当も毎日ちゃんと食べてくれるから、嬉しくて」




「…そう。……え?」




なんだか皐月の話が惚気になってきたところで、和歌子が箸を止める。




「毎日?作ってるの?るりちゃんのお弁当」