彼女の枕元にあるスマートフォンのアラームはまだ鳴らない。

 皐月は愛しい人のために朝食を作っていた。味噌汁の味見をしていたところで愛しい人の寝言が聞こえる。
皐月は寝室のほうに視線をやった。パーテーションが取り外され、寝室は丸見えである。布団の上でもぞもぞと動く愛しい人。


「んー……すてきぃ……ゆうきくぅん……」


その瞬間。皐月の手元から味見用の小皿が落ち、床にて耳障りな音を放った。


「……誰?」


愛しい人よ。恋人の名前はゆうきではなく皐月である。
皐月はすぐさまるりのもとへ走り、馬乗りになって肩をゆさぶり無理やり起こすのだった。