彼が動いた。
ガッと腕で抱きかかえられて、私は一言も漏らせないまま部屋の奥へと連れ去られる。ベッドに落とされ、私の両手は頭の上で一つにくくられ、大きな片手でシーツに縫い付けられる。
両足に彼の体重が乗り、無言で降りてきた唇に言葉も封印された。
ドアが閉まる音が、部屋の中に響く。
彼は私を拘束したまま熱くて激しいキスを繰り返す。こんな余裕のない彼を見たのは初めてだった。
酸素を求めて顔を背けると、手で戻されて固定される。
キスで意識が飛びかけた。
少しだけ唇を離し、彼も荒い呼吸で言った。声は低く、ザラザラとして、爆発前の可燃物のような危険な余韻をばら撒いている。
「―――――謝罪と理由は、後で聞く」
また口付ける。首から顎にかけて固定されていて、私は顔を動かすことも出来ない。
唇は既に赤く腫れ上がっているはずだ。
「・・・・は・・・・くわた、に、さ・・・」
「だから」
彼の瞳の中で、欲望と怒りが激しく燃えて揺らめいていた。ギラギラと光って一心に私を見詰める。その射抜くような視線だけで、呼吸を忘れそうだった。
「――――――今は言葉は忘れてろ」
5日間の休養で、私はとっても元気になっていた。
だから耐えられたのだと思うくらいに激しく何度も桑谷さんは私を抱いた。声も涙も懇願も彼の唇が全て吸い取り、私はなすすべもなくただひたすらに流されていた。
お腹のことを庇うことすら忘れていた。



