女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~



「君とアルコールはセットなんだ、俺の中で。それが、飲まれないビールが台所に溜まっている初めての光景に驚いている」

 私はパンと叩いて皺をのばし、洗濯物を干していく。頭の中で言い訳を懸命に考えていた。うーん、よし、女性の永遠のテーマで逃げよう。

「・・・私も初めてよ。だけど、最近お肉がついてきたのよ」

「ん?」

 私は二の腕と太ももをつまんだ。

「見て、この不快な脂肪」

 桑谷さんが苦笑した。

「・・・ぷにぷにしていて気持ちいいけど。それに、気にするほどついてるとは思わない」

「ダメ、これは不快なのよ。そして、それは運動不足とアルコールによるカロリー摂取の結果だと思っているの」

「ジムにでも行くか?」

 彼の声に笑いが含まれた。・・・よしよし。誤魔化せている。

 私は洗濯物を終えて籠を持つ。そして彼を見て首を振った。

「繁忙期に入ったら店でも動くようになると思うし、もう少し暑くなったらビールも我慢出来ないと思う。ちょっとジタバタしてみてるの、私」

 にっこり笑うと、やっと納得した顔をして、桑谷さんが頷いた。

 ・・・・はあ~・・・危ない危ない。心の中で胸を撫で下ろす。いやあ、中々大変だわ。さっさと検査しようっと。

 検査棒はもう既に購入済みなのだ。あとは、実行するだけ。私は壁のカレンダーを睨む。そして、籠をしまいに洗面所に向かった。