女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~



 私は肩を落として、実は、と話す。

「・・・彼の実家へ母の日のお祝いに行ったときに、お義母さんに妊娠じゃないのって言われて・・・」

「え?」

 元々持病でずっとなかった頭痛が最近酷いこと、でも生理不順で日数的にはまだ良く判らないことを話す。

 福田店長は黙ってそれを聞いていて、カウンターを指でトントンと叩いていた。

「・・・有り得るわ。私も悪阻は酷くなくて、一回も吐かなかったし」

「ううう・・・」

 唸る私の手を叩いて、店長はまあまあ、とにっこり笑って言った。

「もう結婚もしてるんだし、悪いことじゃないじゃない。むしろ喜ばしいことよ」

「・・・はあ。それは、確かにそうかもですが・・・」

「ハッキリするまで気持ち悪いでしょうけど、仕方ないわね。来週には6月になるんだし。・・・もし陽性だったら、すぐ教えて頂戴ね。繁忙期のシフトの問題があるわ」

 店長の言葉にハッとした。

 そうだ!一人混乱状態でそれを忘れていた!

 今妊娠となると、この夏の繁忙期にもろ被ってしまう。妊婦の販売員はたくさんいるが、やはり重いものはもてないし、大体あの体ではこの狭いカウンターの中に入れない。

 だから、変動シフトを組んでもらうか別のアルバイトを雇って穴埋めをしたりするのだ。

 お客様にも同僚にもとても気を遣われるハメになる。それで当然だし、他人の事なら私も喜んで気でも何でも遣うが、いざその状態に私が耐えられるかは全く別だ。

「・・・・済みません」

 私の凹んだ声に、店長はカラカラと笑う。