「上だなー。気をつけて」
「はい」
埃を被っているのにしかめ面してディスプレイ用品をお腹に抱える。そしてそろそろと脚立を降りた。
「は、取れた、と」
取った物を床に置いて脚立を直す私を桑谷さんがじっと見ているのに気付いた。
「何?」
彼は腕を組んで棚の一つにもたれかかったまま、ぼそりと言った。
「・・・本当に凹んだみたいだな。元気がない。何があった?」
私は苦笑を浮かべたままで彼の近くまで戻る。
「・・・あまり思い出したくないのよ。店長が待ってるし、行かなきゃ」
そして横を通り過ぎようとしたところで、彼に腕を捕まれた。
「言えよ」
私の腕を掴んだままで彼は足を伸ばして入口のドアを蹴って閉める。バタンと音を立ててドアは閉まり、ストック場の中には私達二人だけ。
私は疲れてため息をつく。・・・もう、面倒臭いんだってば。
「あなたは売り場に戻らなくていいの?」
「俺はこのまま休憩だ」
「私は違うのよ。さっき出勤したばかり」
「だから早く言えよ」
くそ。しつこいな。私は目をぐるんとまわしてまたため息をつく。



