今日はツイてない日なんだな、そういう日ってあるよね、と仕方なく自分にそう言い聞かせていたところで、低い、よく通る声が耳を撫でた。
「――――あれ、まり?」
振り返ると、本日はスポーツブランドから支給の上下を着た桑谷さんがパッキン(段ボール)を二つ抱えて遠くのドアのところからこっちを見ていた。
私は無表情のまま手をヒラヒラ振る。
「どうした?えらく暗い顔だな。3階に用か?」
スタスタと歩いてきて、足元にパッキンを下ろす。軽々と持っていたからウェアかなんかの軽いものかと思ったら、下ろした床に結構な音が響いてビックリした。
店内で彼に遭遇するのは久しぶりだ。私はテンションを少し持ち直して、ストック場のドアを指差した。
「今朝は色々とツイてないの。気分変えに資材取りに来てみたら、コレだし。また2階まで行くなんて面倒臭い・・・」
ぼそぼそと苦情を言うと、ああ、と明るい声を出して彼は笑った。
「一つ、解決だな。鍵は俺も持ってる」
「・・・おおー!!」
そうか、彼は3階で働く社員!しかも責任者クラスの人間ではあるから、鍵も任されてるんだー!
思わず両手を叩いて喜ぶ。素敵。これぞ運命の出会い!
腰に巻いている小さなバッグから鍵を出してストック場のドアを開けてくれた。
「ありがとうございます!」
ウキウキとなった私が頭を下げると、これ置いてくるとパッキンを抱えて売り場の方へ歩いて行った。
消えている電気を片手で押してつけ、自分の店の棚のところで資材を確認する。
脚立を持ってきて上の方から取っていたら、彼が戻ってきた。



