「いいの、あった?」

 店長が聞くのに、私は仏頂面で答える。

「もう何でもいいや、と思ってコレです。でもこの2000円の出費、ムカつきました」

 私の言葉に福田店長は苦笑した。

「・・・まあ、原因が原因ですものね。でもロッカーでチューちゃんなんて、初めて聞くわ~」

 ここはまだオープンして6年目の百貨店なので、地下であってもネズミはあまり居ない。見かけたことなどないし、ちょっと話に聞くかな?程度なのだ。

 施設としては上等で、バックヤードや従業員のトイレなども他の百貨店に比べたら格段の差がある。綺麗さも、便利さも。

 なのに、なーぜー。

「ううう・・・本当に驚きました」

 しゃがんでお客様から隠れ、髪をまとめて帽子に突っ込む私の泣き言に、店長はよしよしと優しく慰めてくれた。

「気分変えに、資材でも取ってきてくれない?」

「はい、了解です」

 私は笑顔でこたえる。店長、愛しいぜ。

 滅多に使わない資材は3階のストック場に置いてある。売り場も暇だしまだお腹も空いてないし、急がないからゆっくりでいいわよと言う店長に頷いて、バッグを持っていつもの北階段を3階まで上がった。

「あれ?」

 廊下の端にあるストック場まで歩いて行って、ドアの張り紙に気がついた。

『施錠中。鍵は総務まで』

 ・・・・うそん。私はガックリと肩を落とす。・・・総務って、2階のこれまた端じゃん・・・。

 何でよー、いつの間に鍵をかけることに決まったのよ~・・・。目の前のドアに八つ当たりしたい。イライラと拳を握り締める。