「ゴミのおじさんにどうしたらいいか聞いて来るわね。小川さん、真っ青だけど大丈夫?医務室行く?」
私は、いえ、と手を振る。
「大丈夫です。ありがとうございます。済みません、処理まで・・・」
玉置さんは美しく笑って、気にしないで、とロッカールームを出て行った。
周りのロッカーを使っている従業員が一斉に息を吐き出した。何人かが、あの人すごーい、と玉置さんを賞賛している。
奥の方から騒ぎを聞きつけた隣の店の友川さんが走ってきた。
「小川さん、大丈夫!?」
「うん、何とかね。気持ち悪いけど」
・・・・あーあ、私の靴・・・。情けない顔でもう履けない店内用のローファーを見た。買いに行かないとダメよね。これにはもう二度と足を突っ込みたくない。ベンチに座り込んで、深いため息をついた。
とりあえず制服に着替えて名札はつけずにカーディガンを羽織り、売り場へ降りる。
「おはよう、小川さん。―――――あら?」
まだ髪も下ろしたままの私を見て、福田店長が首を傾げた。私物鞄を仕舞って財布だけを手に取り、私はしゃがんだままで店長を見上げた。
「私のロッカーで、チューちゃんがお亡くなり遊ばしてまして」
「ええ!?」
「・・・靴の上で」
「・・・あらあら」
それで、ヒールなのね、と店長は頷く。
「済みません、スーパーに靴買いに行ってもいいですか?」
了解を貰ったので、すぐに戻りますと頭を下げて、同じ施設の中に入っている大手のスーパーへと走る。
もう取りあえずでいいからとパッと選び、2000円で黒いローファーを買って百貨店へ戻った。



