「用意はいい?―――――君の父親が来たってよ」

 この子が。

 周りも全部巻き込んで、笑ったり、泣いたり、苦しんで悩んだりして、新しい人生を生きていくんだな。

 色んな場面で、空に手を伸ばすんだろうな。

 私達はそれを見守って、そしていつか手から離すんだな。

 子育ては、料理みたいだ。

 仕込み20年の、鍋料理みたい。色んな具材は私達の遺伝子。それに彼本人が味をつけていく。蓋をしたり、火を弱めたりして、大切に見守るんだろう。ダシを足したり、スパイスを入れたりして。


 私は笑う。


 この子も笑っている。


 その時ドアが開いて、彼が入ってきた―――――――――






 「女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~」終了。