私が首を傾げたまま待っていると、桑谷さんはやっと顔を上げて言った。

「・・・それでこそ、小川まりだ。よくよく俺は大変な女に惚れたもんだ」

 答えようがない。私は黙って肩をすくめて見せた。

 まだ笑っている彼に、そういえば、と言った。

「今日、緘口令をといたの。明日には、桑谷の嫁さんが妊娠したって噂が広まってるはずよ。あなたはまた方々からいじられるわね」

 彼はにやりと企んだ笑顔をした。

「その話を声に出して俺に言ったやつ全員から、お祝いをむしり取ってやる」

 そしてまた楽しそうに笑っていた。

 私はやっと本当に心が軽くなったのを感じた。

 もう時刻は12時を回っていて、早く寝ないとと彼に寝室に追い払われ、私は笑顔でベッドに入る。

 後片付けは彼がしてくれるらしい。

 急速に眠りの中に引き込まれながら、私は薄れる意識の中で考えた。


 ・・・・バカ女は退治した。そして、彼は私と一緒にいる。



 これでまた、勝ち点ゲットだ。