「滝本に電話したんだ、君を探していたとき」
「はい」
目がキラキラしている。彼は何かを思い出して、また笑い出す。
「何なのよ」
「中々電話に出なくてイラついてたら、やっと出た電話は女性の声だったんだ」
私は目を瞬く。
・・・え?滝本さんて、あの、調査会社の滝本さんよね?長身で眼鏡の紳士的な男。物腰も雰囲気も柔らかいが、何を考えているかが読めない瞳といつでも微笑んでいる口元が、私の警戒心を引き起こす男。
出来たらあまり係わりたくないタイプの人間であると確信したあの人の部屋に女性が!?
「え?本当に?・・・それって、彼女?」
私もつい身を乗り出す。
彼はビール缶を顔に引っ付けて笑いを止めようとしている。
目を細めて言った。
「そうだろう。朝の8時にヤツの部屋に女がいるなんて、長い付き合いで初めてだ。アイツはホモなんじゃねーかと疑ったこともあるくらいに、ヤツは女の影がないんだ」
「へえ~・・・意外、かも。でも、彼女が出来たのならいいよね、やっぱり人を好きになるんだ」
そしてその時その女性を通じてやった悪戯を話してくれて、私達はお腹を抱えて笑った。
その時の滝本の顔が見たかった~!!とお互いに叫びあう。
しばらく笑ったあと、私が彼に、何で滝本さんに電話したのと聞くと、彼も笑うのを止めて言った。
「・・・もしかしたら、あっちに行ってるのかも、と思ったんだ。君の実家に電話したら笑われて、楠本さんは家出そのものを知らなかった。君が隠れるところはどこだろうと考えて、一応あいつにも聞いておこうかと思って」



