これで、確実にこちらが有利になる。
日差しは暑かったけど、私は幸せでそこにしばらく座っていた。
夕方近くなって、彼がそういえば皆に連絡はしたのか、と聞いたので、やっとそれに気付いて各所に連絡を入れたのだ。
弘美と実家と楠本と。
やっぱり楠本は弘美に電話を入れていて、弘美に『人のことに口突っ込むんじゃないわよ!』と怒鳴られたらしい。私はそれを聞いて弘美と爆笑した。後ろで桑谷さんが同情に耐えない顔でため息をついているのを知っていた。
そして実家にも、家に帰ったよ~と電話を入れて、楠本と話すのは鬱陶しいので、ヤツの嫁さんの千尋ちゃんに電話して伝言を頼んだ。
「家に戻った、と伝えてくれる?それで判るから」
『はい、判りました』
彼女の春風のような優しい声に安心する。この子があいつの妻でよかった。可愛い上に、まとも。それが大事。
「その後で絶対ぐちぐち言うと思うけど、それは無視してね。聞かなくていいからね、千尋ちゃん」
彼女が電話の向こうでケラケラと笑う。
『大丈夫です。嫌な時は方言でベラベラ喋ると、判らないらしくて無口になりますから、彼』
あははは~、賢い!私はじゃあね、と電話を切る。千尋ちゃんは大阪出身、しかも出が南の方らしく、その気になれば河内弁を操って楠本を煙に巻いているらしい。あはははは、もっとやれ。
晩ご飯を終えてのんびりしていると、そういえば、と言って桑谷さんが笑い出した。
「どうしたの?」
こんな楽しげな笑顔を見たのは久しぶりだ。何があったんだ、彼に。
私のところまで歩いてきて、ビールを開けながら彼が言った。



