私は前に座って、ぺこちゃんのような無邪気な笑顔で答える。
「売られた喧嘩は買うでしょ。そして、倍にして返すべし」
「・・・頼むから、その個人的規則は捨ててくれ」
私はむう~っとむくれた。でもその個人的規則がなかったら、そもそも私達は出会わなかったわけだし、と呟く。男に仕返しをしたくて入った百貨店で、桑谷さんに出会ったのだぞ。
「だから、彼女と何があったのよ?」
「・・・それ、重要か?」
「彼女の話が本当かどうか知りたいだけ。キスしたの?」
彼は嫌そうに顔をしかめたまま言った。
「・・・した」
「その後最後まで?」
「そこは重要じゃねえだろ?」
私はニヤニヤしてフォークをぶらぶらさせる。私はこんなことでヤキモチなんか焼かない。現在の彼が私に一筋なのがハッキリしているからだ。
ただ、楽しくて問い詰めていた。
「うん、重要じゃないけど知りたいだけ」
「・・・面白がってるだろ。言わない。食べたなら、片付けるぞ!」
親指を下に向けて散々ブーイングしたけど、彼はさっさと立ち上がって食器を片付けだした。
私は追及を諦めて、久しぶりにお気に入りの庭が見える廊下に出る。そしてあぐらをかいて座って、緑が揺れるのを眺めていた。
心が落ち着いていた。
彼が玉置を犯人であると認めた形になったので、安心していた。



