聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、頭がずっしり重くなった。
「か、かな?!」
機嫌悪そうに立っていたのは、かなだった。
はっ!
そういえば…晴輝と別れたって言ったから…。
「2年の校舎、うるさいやつばっかり」
「そうかな…?」
「いつもこんな感じなわけ?」
「うん。そーだよ。だから慣れた!」
「あっそ」
学校でかなと話せる日がくるなんて…!
ちょっと感動…!
「はい、これ」
かなが、可愛いノートをあたしに渡した。
「かな…こんな趣味が…」
「黙れ。バカ」
「…う…」
ちょっとからかっただけじゃんか~。
そんなキレないでよね~。
「ゆうのに決まってんだろ。昨日、俺の部屋に忘れてたし」
「…あ!そーだったね〜ごめん」
「ゆうねぇ?……俺の部屋…ねえ?」
突然、後ろから晴輝の声。
廊下に出てきてたみたい…。
っ…。
やばい…。
「何黙ってんの~?結衣さん」
「…、」
背後から殺気を感じる…。
晴輝の顔が見れない…。
「か、奏多はあたしの…」
「へー、奏多くんっていうんだ。それで(かな)ね〜。仲いいんだ〜。へぇ〜。」
めちゃくちゃ怒ってる…。
ただの弟だよ!って言いたいけど…。
かなは、あたしとかなが姉弟だって知られたくないらしい…。
前に、かなが同じ高校に入学する日に「俺と姉弟だってこと誰にも言うなよ」って言われた。
たぶん、こんなデブな姉がいるって知られたくなかったんだ。
晴輝に誤解されるのも嫌だけど……かなとの約束も破りたくない…。
どーしよ…。
「俺、そろそろ帰る…じゃ」
「えっ?!ちょっと、かな?!」
ににに逃げた?!?!
あいつ…。
めんどくさいことには首突っ込まない主義だもんね…。
わかってたよ!
もう知らない…。
とか、かなに怒ってる場合じゃなくて…。
この状況…どーしよ…。
「は、はるき…」
「ちゃんと説明して、あいつ誰?」
…。
絶体絶命…。
あたしは弟と彼氏、どっちを選べばいいの…?!
助けて……比呂っ。