「ただいま〜!」
結衣が、元気に玄関を開ける。
返事はない。
結衣が、無言になる。
また始まったよ…。
…もう日課だな。
「ちょっと!おかえりぐらい言えないの?!」
リビングまで走って行って、ソファてくつろいでいる弟に向かって、叫んでる。
「…ちょ、今さ、ラスボスなんだけど…後にして」
「じゃあ、おかえりって言ってよ!」
「はいはい、後でな」
「今!今じゃなきゃやだ!」
「は?ガキだな…そーいうとこじゃねー?」
「はは〜ん、負け惜しみかい??あたしのほうが年上だからってそんなに悔しがらなくていいじゃん〜」
「はぁ…?マジめんどくせぇ…」
「なっ?!」
俺は、毎日のように、この兄弟の言い合いを聞いてる。
飽きねーの?って最近思うぐらい、顔を合わせればケンカばかり。
奏多は高1で、俺らと同じ高校。
年が近いから、街を歩くと、周りから見たら美男美女のカップルにしかみえない。
「…かな、今日も女の子にひどいこと言ったでしょー?」
「は、言ってねーし」
「家の前で、女の子が泣いてた!まあ、スルーしてきたけどさ…」
「…家まで押しかけてくんだよ。さすがにうぜーだろ」
「ふふっ…」
「何笑ってんだよ…?」
「女好きよりはいいなって思ったの♪」
「……あっそ」
仲はいいんだよな〜。
だって、お互いのこと(ゆう)と(かな)って呼んでるし。
小さい子かよって、いつも思うけど。
「あれ?!比呂、帰ってくるの早くね?!」
「おう!結衣が、彼氏と別れたからな」
「は、まじて?!だっせ〜、どーせ振られたんだろ??」
「比呂!余計なこと言わなくていいから!!!」
「てか、早く遊ぼーぜ!比呂!」
「制服脱ぐから、ちょっと待っとけ!」
奏多は俺に、すげーなついてる。
俺の弟にしよーかなってぐらい。
俺が、2階に上がって、俺専用のとこに制服をかけていると、二人の声が聞こえた。
「ゆう、なんで痩せたわけー?」
「え?なんかねー、他の男子とも話さなきゃな〜って思ってさ!」
「ふーん…もうさ、彼氏と別れたなら、ゆうの教室行ってもいいの?」
「え!何それ?!かながあたしのとこ来なかったのって、気使ってたの?!」
「はぁ…お前の彼氏、俺のことを知らねーから誤解するだろ?」
「なるほど!」
「まあ…それだけじゃねーけど…」
さすが莉子…。
鈍すぎ…。
たぶんあとひとつは、王子の問題だろーな。
俺が結衣と話してても、すげー睨んでくる。
独占欲やべーからな。
ああみえて。
「おい!比呂ー?まだかよ」
「…今行く!」
てかさ、奏多って大人になったな…。
そんなこと考えてるとは、思わなかった。
そーいえば…木村とかと話してたよな…結衣。
ああああ、まじ不安しかねぇし。
余裕ねーな…俺。

