―晴輝SIDE―


「はあぁ…」



さっきから、ため息ばかり出る。

これも全部、結衣のせいだ。

あいつは、可愛すぎるんだよ。

俺だけアイツの可愛さを知っておきたい。



その気持ちが強くなって、俺は、結衣を太らせた。


そーすれば、他の奴が結衣を見ることがなくなると思った。


沙里と梨里は、分かってたみたいだけど。

結衣が鈍くてよかった。




「なのにさ…」




独り言いうくらい、俺は、結衣のことで頭がいっぱいだ…。




「あれあれ〜?どーしたの?モテ男くん」

「…モテ男ゆーな」

「いいじゃーん!てか、どーしたんだ?」




…このうるさい奴は、俺の幼馴染の啓太。




「…好きすぎて死にそー…」
  
「ぷっ!また結衣ちゃんのことかよ」

「うっせーよ…気安く名前呼ぶな」

「はいはいー。そーいえば、実はめっちゃ美少女だったんだな!朝みて、腰ぬけたし!」


「…美少女とか言うな…てか、褒めんな」


「ひえー、独占欲やば!」


「知ってるよ…」





あー。

結衣、中学の時みたいにいろんなヤツから告白されんのかな。


耐えられねーよ。


しかも、俺がOKされたのも、奇跡みたいなもんだろ…。




「晴輝…いますか…?」



教室の前の入口の方で、俺の一番好きな声が聞こえる。


俺のクラスのやつに小声で話しかけた声でさえ、俺にはすぐわかる。




「結衣!」



珍しくね?!


俺が結衣の教室に行くことはあっても、結衣から来てくれることなんて、無かったのに…!


それに、朝…怖がらせてしまったのに…。



それでも来てくれたのか…。


やべ…にやける。



「どした…?」



平常心だ!俺!



「へへ〜あのね〜?」



可愛い…。

なんだよ、その笑顔…。



他の奴も、見とれてるし…。

イラつく…。



「あっれー?結衣ちゃんじゃん!どーしったの?」



ちっ…邪魔だな。啓太…。

しかも、テンション高すぎ…。




「あっ…えっと……け、け、け…なんだっけ?」


「まだ覚えてくれてないかー。啓太だよ!忘れないでよ〜?」

「うん!覚えた!」

「よっし!」



なんでそんなに仲いいわけ…。


だんだん不機嫌になる俺。



「で、なに?」


「うん!えっとね〜」




俺が苛ついてるなんて、鈍感な結衣さんは気づかず、持ってきた紙袋を俺に渡した。



「今日ね!調理実習で作ったの!」


「…っ?!」


手作り?!

うわ…やばいやばい。

何なの、俺を喜ばせる天才かよ…!



「下手なんだけどね…ごめんね」



恥ずかしそうに、申し訳なさそうに言う結衣が可愛すぎて、抱きしめたくなった。


結衣は、不器用で、料理とかをしない。


だから、結衣の手にはたくさんの絆創膏が貼ってあった。


「…これ、大丈夫?」

「あっ!これ?!ちがうよ?!包丁で切ったとかじゃないからね!ほんとだよ?!」



絶対うそ…。


嘘つくとき、目合わせないくせがあるし。

嘘つけない性格なんだよな。



「ありがとうな。」


一生懸命、作ってくれたんだよな…。


本当に、好きだ…そーいうとこ全部。


「…でも…他の子からもう美味しいのもらってるよね…!やっぱいいや!」


突然、結衣が教室から出ようとしたから、しっかりと手で押さえた。



「いる。結衣の以外、貰ってないし」

「…ほんとに?」

「うん。ほんと」

「よかったあ…。」


…。

ほんとに、結衣は可愛さで俺を殺せるよ…。


だけど、わかってる。

中1から付き合ってるんだから。

結衣はヤキモチなんて、妬いてるわけじゃないってことを。


たぶん、上手なやつと比べられるのが嫌なんだ。

負けず嫌いだし…。



なんで結衣は妬いてくれねーんだろ…。