寿美礼から電話が来たのは
学校を出て三十分くらいした時だった。

《どうした?》

俺はチャリを停めて電話に出た。

《陽菜君、今何処にいる!?》

切羽詰まったような焦ってるような声だ。

《本当にどうした?》

落ち着かせようと
普通の声で返事をしたが
寿美礼の言葉で俺の顔が青ざめた。

《皇君が拉致されたの❢❢》

は? 皇多が拉致された? 誰に?

《お父さんには連絡したけど
直ぐには来れないだろうから
私が皇君を助けに行ってくるから❢❢》

ちょっ、待て、確かに寿美礼は
強いけど女の子なんだから
危険な目には遇わせられない。

《寿美礼、お前、女の子なんだぞ》

父親が警察官の寿美礼は
その辺の女よりかは強いが
それでも、女の子なのは変わらない。

《心配ありがとうね
だけど、大丈夫だよ❢❢
かすり傷くらいはできるかもだけど
皇君は絶対に取り返すし、
死んだりしないから》

そういう問題じゃないだろう……

《あのなぁ寿美礼……》

続きは言えなかった。

何故なら、寿美礼が電話を切ったからだ。

きっと、皇多を見つけたのだろう。

俺は急いで家に向かった。

チャリを放り投げて、乱暴に玄関を開けた。

「陽菜人、どうしたの?」

皇多が拉致されたことと寿美礼が
一人で助けに行ったことを説明した。

二時間後、寿美礼からの電話で
俺は拉致されたと言われた時よりも
顔面蒼白になった……

《白濱総合病院だよ》

『母さん、車出して、
皇多が白濱総合病院に運ばれた』