『寿美ちゃん、ありがとう』

ヤられていたとはいえ
俺の意識ははっきりしている。

「どういたしまして」

寿美ちゃんのお蔭で助かった。

でも、“男”に触れられるのが嫌だ……

それが陽菜人なら尚更。


一つは“男”が怖いから。

もう一つは“汚された”から。

陽菜人は俺のことを
綺麗だと言うだろうけど
汚された本人はそう思えない。

『皇多❢❢』

病室のドアが開いて
陽菜人に呼ばれた時に
身体が震えてしまった……

「陽菜君は近づかない方がいいかも」

寿美ちゃんそう言うと
哀しそうな表情(かお)をした。

「私は大丈夫かしら?」

母さんが寿美ちゃんに訊いた。

「はい、私達は外にいますね」

俺に気を使ったのだろう、
二人は病室を出て行った。

「ねぇ、皇多、陽菜人が怖い?」

母さんに訊かれて首を横に振る。

陽菜人は怖くないけど、
俺は汚れてしまったから……

「そう……陽菜人が怖いわけじゃないのね」

今度は首を縦に振った。

本音は今すぐ陽菜人に
消毒してもらいたい。

言えば陽菜人は
してくれるかも知れないけど
心とは裏腹に身体は拒絶反応を
してしまうだろうから……

『母さん、本当は今すぐ
陽菜人に抱いてほしいんだ……』

あんなことの後なのに……

「そっか……」

母さんが抱き締めてくれた。