『寿美ちゃん、ありがとう』

ヤられていたとはいえ
皇君の意識ははっきりしている。

「どういたしまして」

今の皇君は“男”に
触れられたくないだろう……

それが陽菜君なら尚更。

一つは“男”が怖いから。

もう一つは“汚された”から。

陽菜君は皇君のことを
綺麗だと言うだろうけど
汚された本人はそう思えない。

『皇多❢❢』

病室のドアが開いて
陽菜君に呼ばれた時に
皇君が身体を震わせたのを
見逃さなかった。

「陽菜君は近づかない方がいいかも」

私がそう言うと
哀しそうな表情(かお)をした。

「私は大丈夫かしら?」

燿子さんは母親だし女性だから
多分大丈夫だろう。

「はい、私達は外にいますね」

皇君の病室を出て中庭に来た。

「陽菜君、きつい言い方してごめんね」

皇君のためとはいえ、
少々、きつい言い方になってしまった……

『いや、いいんだ。
皇多を助けてくれてありがとうな』

力ない声でお礼を言われた。