ある噂話の世界にて

(さぁ、思いっきり力を入れて
 扉を開けるんだ!)


扉を開けようとしたまさにその時



「なんで私がここに円ちゃん
 連れて来たと思う?」




動きが止まる


美輝は私のことを見ていたのか?


そんなっ…

これだけ頑張ったのに




「なんで私がここに円ちゃん
 連れて来たと思う?」



もう一度同じ質問をされた


ゆっくりと顔を美輝のほうへ
向ける


どうやら美輝はこっちを見ていなかった


高い位置にある窓から差し込む光を見ていた

光によってこの廃工場らしき建物のなかに
漂うホコリが見える

その位置からだと私は美輝に
見えていないのでは?



これはチャンス!とばかりに
もう一度扉に手をかける


このチャンスを逃したら
いつここから脱出できるだろうか……