バシャーン

それと同時にこの駐車場全体に鈍い音が響きわたった。

「ミユ!ミユ!!」

川の水が赤く染まった。


 妹が死んだ。

即死だった。
あのあと急いで救急車を呼んだが来た頃にはもう、ミユは冷たくなっていた。
震えが止まらなかった。
できれば夢であってほしかった。
目を閉じると妹が川に落ちる瞬間が浮かび上がる。
体は凍りついて、涙すら出なかった。

 「あなたのせいよ!」

 「お前のせいだ!」

父、母、親戚、友達………
いろんな人に、言われた言葉が生々しく頭に響く。

 とうとう慧太は家を出た。
そして、ある高校に来た。
最近屋上が使われなくなったという高校に。
そして、鍵を盗み屋上の倉庫を自分の家としたのだった。


     ―――――そして、今………―――――

妹を殺しておいて自分だけが夢を叶えるなんてできるはずもなく、プロを目指して始めたギターは今ではただの趣味になっていた。

 この話を終えたあと、彼は『こうなるくらいだったら、キスされてたほうがましだったよな……』と笑いながら、すがるような声で呟いた。
 アリスの口から言葉がこぼれた。

「そっか……」

貴方は悪くない!
アリスの目から涙があふれでた。
だって…だって………!

「一番辛かったのは………あなたじゃない……っ!」

彼の目が丸くなった。
そして、彼の目からひとすじの涙が流れた。
月明かりに照らされる彼は、見とれてしまうほど綺麗だった。

「ミユちゃんのためにも、自分の幸せをみつけようよ。」

 「…………ありがとう。」

そう言うと彼は、私を抱きしめた。
涙を隠すように……。
私は、彼の背中に手をまわした。


 だいぶん落ち着いてきたな………

 「………好きだよ。」

彼が、そう耳元でささやいた。

「………え?」

 「お前が好きだ。……初めて会ったときから。」

え、うそ………
これって告白!?

 「俺と、付き合って?」

なにこれ、めっちゃ嬉しいんだけど………!

「……………………はい。」

 彼が微笑んだ。
今まで見たことがない優しい笑顔だった。
 気がつくと、目の前に彼の顔があった。
彼の右手が私の首筋に触れる。

  ドキッ………

わ……自分の中からこんな音、聞いたことない

 「目、閉じて………」

目を閉じていても、貴方を感じる………
そんななか、彼と私の唇が重なった。

――――――――――――END――――――――――――



おまけ


「名前……慧太っていうんだね。」

「うん。…………俺さ、」

「ん……?」

「もう一度ちゃんとギター始めるよ。」

「うん……!いいと思う、応援してるね。」

ふたりは優しくキスをした。