私達は、ならんで座った。

すると彼は、話し始めた。

 「俺、妹がいたんだ。」

………………いた?

「え、今は?」

 「今はもういない。」

………………………え?

 「俺が殺した。」

アリスは言葉を飲んだ。
彼が……人殺し?
少なくとも私にはそんなことをする人には見えない………。

  ギリッ――――

彼の歯軋りをする音が聞こえた。

 「俺が……俺があんなことをしなければ!」

そして彼は話し始めた。

―――――小学5年生―――――
   
 俺と妹は仲がいい。
俺の一番近くに妹がいて、妹の一番近くに俺がいる。
それはずっと変わらないと思っていた。

 妹は人気者だ。
成績優秀、運動神経抜群、人望が厚い、器用、かわいい………
しかもになんてまるで見えないしっかり者。
妹は、俺がほしいものをすべて持っていた。
俺はそんな妹に憧れていた。
大好きだった。

 ある日、俺がギターの練習をしていると、妹が部屋に入ってきた。

 「お兄ちゃん、これあげる。」

「ん?パズルのピースの……キーホルダー?」

 「うん、これ私のとお揃いなの。『私とお兄ちゃんの絆は永遠に切れない 』ってお守りだよ!……ずっと仲良しでいてね!」

あれ?
ミユの笑顔が少しだけぎこちない気がした。
…………気のせいかな?
ああ、きっと気のせいだ。

「うん!ありがとう!」

俺は気にしないことにした。

 最近、俺はあまり妹と一緒に通学路を歩かなくなった。

 「あらミユ、もう行くの?」

 「うん。お兄ちゃん、今日も迎えに来なくていいから。じゃあ、いってきまーす!」

「……おぉ、行ってらっしゃい。」

 ここのところずっとこの調子だ。
何か、あったんじゃないか?

 今、俺の目の前に妹がいる。
妹には気付かれていない。
俺は、妹のあとをつけているのだ。

 ここは……中学校?

中から学ランの中にパーカーを着た、金髪の男が出てきた。
おいおい、間違いなく不良じゃねーかよ!

 「ミユ!」

………え?
あいつ今、ミユって……
いやいやまさか…な………

 「…は……はいっ!」

え………ええ!?
嘘だろ……おい……頭が追い付かねーよ!
えぇ~と……つまり、ミユとあいつが仲良しで……?
いやいや……ミユは超びびってんじゃねーかよ!
 金髪の男が彼女の肩を抱く。
……………?
あいつと付き合ってんのか?!

慧太は疑問を抱えながらも、家に帰った。