まだまだ慣れない満員電車。少し酔っちゃうよ・・・・・。横にも前にも、おじさんばっかで、密着するのはいやだな・・・・・。
「あれ、葵?」
ふと名前を呼ばれて横を見ると、そこには驚いた顔の太陽くん。
「えッ・・・・電車同じだったの・・・?」
「うん・・・・。オレもこの時間だよ。」
そうだったんだ・・・・。太陽くんがいるとなんだか少し心細いのが消える。
「よかった・・・・。なんかちょっと心細くて。」
苦笑いしてそういうと、
「お前、こんなことで怖がってんの?馬鹿だなー」
って笑顔で言ってる。
「うるさいなぁ・・・・、しょーがないじゃんッ」
まだであって半日ぐらいなのに、こんなにも普通にしゃべれるなんて、ハジメテで・・・・。
意外といい奴だし?
「・・・・・・、明日から学校、一緒に行かねえ?」
また少し頬を赤くして言う君。どうせ一緒に行く人いないし・・・・・、。
「いってもいいよ。」
「なんだそれ、上から目線かー?」
でも、太陽くんが一緒に行く人いないなんて、意外だなぁ・・・・。友達も多いのに。
「友達いないの?」
「いるしッ」
「お前こそいないんだろ?」
「いるよッ」
クスクス笑って。満員電車だってことを忘れてた・・・・。うるさすぎたかな?
「・・・・・・、中島?」
ふと呼ばれたほうを向くと懐かしい人がいた。
「芹沢くん・・・・・・・・。」
たぶん、世界一会いたくなかった人。元カレ、芹沢葵くんがそこにはいた。
「葵、知り合い?」
「う、うん・・・・・。」
元カレってことを太陽くんには知られたくない。なぜかそう思ったそのとき・・・
「元カノだけど。」
って芹沢くんが言ってしまった・・・・・。いつのまにか大きな駅を通り過ぎていたみたいで、電車は満員というほどでもなくなっていた。
「ちょ、芹沢くんッ・・・・、」
中学のとき、向こうからフって、違う高校に進学してからは一回もあってなかったのに・・・・。
「中島、今の彼氏なの?」
前と変わらない淡々とした口調。ポーカーフェイス。背がまた高くなってるかな。黒い髪は変わってない。
「彼氏とかじゃ・・・・、」
「彼氏ですけど。」
否定しようと思ったけど、太陽くんはあたしの手をにぎって、そう言った。
「え・・・・・、」
思わず声が漏れる。
「そうなんだ。中島も面食いなんだね。」
なにかを見透かされてるような瞳に少し怖いと感じた。
「葵、行こう・・・・。」
車両を変えて、少し落ち着いたとき、
「ごめんッ!彼氏とか言っちゃって・・・・、」
と太陽くんが手をあわせてあやまってきた。
「いやいや、ちょっと微妙だったし、大丈夫だよ・・・・。」
太陽くんがいてくれてよかった、。
