「棗(なつめ)様、こちらへ。」
倒れた人の間から出てきたのは背の高い2人の男達。
顔は、見たことはない。
新手の敵か?
私に恨みを買う相手が多すぎて、誰の間者なのか見当がつかない。
1人の男は眼鏡をかけ、手にはべっとりと血をつけた物騒な刀を持ち、何が楽しいのかその顔は笑みに溢れている。
それに続いて、明らかに庶民ではない上質な濃紺の袴を着た男が涼しい顔をして、私と距離を詰めた。
異様な空気に、誰かがゴクリと唾を飲み込んだ。
既に敵だと判断している私は、刀を相手に向けながら戦闘態勢に入る。
「誰ですか。」
「ただの通りすがりの者ですよ。」
答えたのは眼鏡の男だった。
おかしな話だ。
こんな真夜中に、通りすがったと?
しかも、昼間でさえ人気のないこの道で?
余計に不審すぎて、ますますこの男達に対して警戒心を強くする。
「通りすがりなら、邪魔しないでいただけますか。」
「それは無理な話だ。」
凛とした声色で命令する濃紺の男に、少し苛立ちを感じる。
「何故です。」
