「拉致があかない。」
このままじゃ、本当に連れ戻されてしまう。
額からは汗が流れた。
仕方ない…。
目の前にいた敵を屈んで足を掛け、倒れたところを刀を持っている手を踏みつけた。
すると、あまりの痛さに刀を離して、のたうち回る敵。
そんな憐れな姿を横目で見ながら、敵が落とした刀を拾う。
「お遊びはお終い。」
雰囲気が変わったのが空気で分かったのか、シンと静まり返る。
「どうせ、連れ戻されるならいっそ死んだ方がマシ。」
ざわり。と、群衆が息を飲んだ。
それもそのはず。
刃を自分の方に向けて、今にも心の臓を刺そうとしてるんだから、気が気じゃないんだろう。
任務は失敗に終わって、何もかもパァだもんね。
ハッ、間抜けな顔。
どうせなら、冥土の土産としてあの人の絶望する顔でも見たかったけど、しょうがない。
空を見上げると、この場とは比べられないぐらいキラキラと綺麗な星がきらめいている。
やっと、やっと解放されるんだ。
