帰り道。




靴箱でローファーに履き替え、校門に向かっていた。




なんか今日は疲れたな……。




これからの学校生活が上手くいくのか心配で仕方なかった。




とぼとぼ歩いていると、校門を出ようとした矢先誰かに腕を引かれた。




「お前、友達いねーの?」




あまりに失礼な事を聞かれ、腹が立った私は言い返してやろうと顔を上げた。




「しょ、翔……!」




あれ...なんか自然に名前が出てきちゃった。




「なんであなたにそんな事言わなきゃいけないんですか。」




なるべくサラッと感情を抑えて言った。




「だって一人で帰ってるから。」




なんだと?!




全く。失礼にも程がある。なんでここまでバカにされなきゃいけないんだ。




確かに友達はまだ出来ていない。でも今日転校してきたばかりなんだからしょうがないじゃないか。




まぁでも、どちらにしたって友達なんか作るつもりないけど。




「あの、つかぬ事をお聞きしますけどあなただって友達いないんじゃないですか?」




「あぁ、いねーよ。」




なに。なんでこんなにストレートに言えんの。ちょっと羨ましくなるじゃん。




ってそーじゃなくて!




危ない危ない。こいつのペースに流されてはだめだ。ここは平然とした態度で……。




「そ、それより!腕、離してくれます?」




「ヤダ。」




子供か!!いいから離してよ!ホント何なのこの変人!!




私はこの男の手を振り払い、一目散にその場から逃げだした。




もうこれ以上、関わりたくない。




私は走った。走って走って息が切れるまで全力で逃げた。





「...っはぁ、はぁ...ここまで来ればさすがに……。」




ちらりと後ろを振り返ると鬼の形相をした男が猛スピードでこちらに向かってくる。




なんでついてくんの?!




私は驚いたまま、ただその場に立ち尽くしていた。




「はぁっ...お前、意外と動けんのな……。」




「なんで来るの!?ストーカー?!」




私は声を上げた。




「あぁ?!ちげーよ!」




「じゃあなんなの!?」




感情のままに喋りすぎて、さっきのように落ち着いた態度がとれなかった。




「友達いねぇんだろ?お前。」




わざわざ追いかけてきてまたそんな事言うなんて……。やっぱ無神経ってゆーか...。




「だったら、俺と友達になんねーか?」




……はい?




友達って、あの友達?




friend?




オーマイガー。




「じゃ、さよなら。」




私はくるりと向きを変えて歩き出した。




「はっ?ちょっと待てって!」




肩を掴まれ無理やり向きを戻された。




「なんで...私なの?」




なんでこんなことを聞いてるのか自分でもよく分からなかった。




「だってお前、俺と話してくれたから。」




意外な答えだった。まさかそんな事だけで?いやいや、そんなはずない。きっと何か目的が……




「朝、お前怖かっただろ。」




「え?」




朝……といえばアレか。そりゃいきなりあんな事されたら誰だって怖いに決まってる。




「大抵のやつは俺と目すら合わせない。」




あ……。




屋上で視界全体がこいつになったあの時。




確かに私は目がそらせなかった。




「お前は俺を見てくれたし、話してくれたから。」