恋愛コンプレックス。


なに言ってんの?!アメとムチって?!




「ちょ、また!抱きつかないで!」




「今のはぜってー結衣が悪い。」




「ま、また、あの本?」




「え、なに落ちたの?」




「違います!」




近い近い...!!さっきより力強いし!




あーあ、甘い事言うんじゃなかった。




結局またこうなっちゃうし……。




もう振りほどく気力すら残ってない。




そう油断した時に、誰かが倉庫に来た。




「おい遅いぞ!!いつまでやって……。」




!!!!!!




先生?!?!




どどどどどどうしよう!!!




今私は翔に抱きつかれている...。この状況をどうやって説明すれば……!!!




そうだ翔!こういう時の言い訳はコイツに任せよう!←最低。




そう思って振り返って名前を呼んだ。




「翔?……って、寝てる……?!」




「お前ら、なにをしてるんだーーー!!!」




「ち、違うんです!これは事故っていうか……。」




言い訳が全く思いつかないよ〜!!




その時、先生の後ろから声がした。




「先生、本当に事故ですよ。」




ん?誰だろう……。




見ると、そこにはカッコイイという言葉がぴったりな男子がいた。




誰この超イケメン。




眩しすぎて目潰れそうなんだけど。




こういう人見ると本気で自分がゴミくずに思えてくるんだよね……。




「おぉ鳥羽(とば)じゃないか!勘違いって……。」




このイケメン鳥羽って言うのか。




名前までカッコつけてるような気がする。




ていうか、なにを言い出す気だ?





「ここに三角コーンが散らばってるでしょ?さっき、これが上から落ちてきたから広瀬くんがこの女の子をかばったんですよ。」




えっ?!




なに言ってんの?!よくもそんな大嘘を!!




「コーンがゴム製だから落ちた時に音もしなかったし、いきなりこんな現場見たらそりゃあ驚きますよね。」




でもなかなか上手い。どこからそんな言葉が出てくるんだ?




「まぁ確かにそうだな...。」




あらら、信じちゃったよこの人。




もっとしぶといかと思ってた。




「早く終わらせろよ!お前ら以外、もうとっくに帰ってる!」




先生はそれだけ言うと、不機嫌そうに去っていった。





マジか……!ったく、翔のおかげで全然終わってないよ!




「なんか手伝おうか?」




うわ、イケメンオーラ駄々漏れなんだけど。苦手なんだよな...こういうタイプの人って……。




「いえ、大丈夫です。」




「そう?じゃあ名前は?」




うわなに!?名前とかどうでもよくない?!




言いたくないんだけど……。




私が目を合わさないでいると、向こうもしゃがみ込んで視線を合わそうとしてきた。




「わ、私の事とかどうでもよくないですか?あっ、翔の事だったら……。」




あ、この人……さっき〝広瀬くん〟って言ってた...知り合いなのかな。




「なんで翔のこと知ってるんですか?」




「だって有名人だもん。1年にめっちゃ怖い人がいるってみんな騒いでたし。」




あぁ、なるほど……。




確かに睨まれたら死にそうになるわ。




「で、君の名前は?」




え、まだ聞いてくんの?!もうその話終わったじゃん!




「うざ……。」