嘘をついた。本当は今すぐにでも心臓が破裂してしまいそうなのに。
てかいつの間にすごい至近距離になってるんですけど?!
こいつはいつもやたらと近い。こっちの気も知らないで間近で真っすぐに目を見てくるから、恥ずかしい。
照れくさくて、目をそらすためにカバンからスマホを取り出し時間を見た。
「そ、そろそろ戻らないと...って、もう6時過ぎてるし!!」
2時間以上もここにいたんだ!まずい、早く帰らないと...!
結局サボっちゃったし、もうクタクタだよ...。
「じゃ、さよなら。明日、先生に怒られる覚悟だけはしておいてね。」
私は翔に背を向けて歩き出した。
しかし、すぐに呼び止められる。
「結衣!コレ!」
振り返るといきなり視界にブサイク顔のウサギが飛び込んできた。
「うわ!ちょっと投げないでよ!」
条件反射でなんとかキャッチできた...。
「良かった...。」
?!私、良かったなんて思ってるの?!
「あ?なんか言ったかー?」
私たちの間にそれほど距離は無いが、翔がかなりの大声で聞いてきたため、自分もそれに合わせた。
「な、なんでもないですー!」
地獄耳……。でも内容は分かってないみたいで安心安心!
気を取り直して再び向きを変えた。
好きにさせるって...どういうつもりなんだろ...。私を本気で好きになる人なんかいるわけないじゃん。
信じたいって思ったけど、やっぱり無理だよ。
握ったままのマスコットをカバンにしまい込んだ。
私みたいなコンプレックスの塊に、友達通り越して恋人なんてぶっ飛びすぎ。
恋愛なんか、一生できない。