大戸結衣。(おおと ゆい)16歳。
私には3つののコンプレックスがある。
ブスな事。声が低い事。名前が最悪な事。
特にこの容姿のせいで今までいじめを受け続けてきた。
この、容姿のせいで……。
「ね!今日転校生来るんだって!」
「マジで?!イケメン?それとも美女?」
扉の外からでも聞こえる大きな声。
その声にみんなが耳を傾ける。
おいおい、少女マンガじゃあるまいし。
転校生は絶世の美女だ!なんて、夢を見るな。
「えー、もうみんな知ってると思うが、転校生を紹介するー。」
先生に視線を送られ、それを合図に私は教室に入った。
ガラガラ……。
途端に騒ぎ声がピタッと止まる。
足音を立てずそろそろと黒板の前に出た。
「転校生の、大戸結衣さんだ。」
「大戸結衣です。よろしくお願いします。」
ぺこりと頭を下げたが、教室中はしーんと静まり返る。
「ぷっ・・・オオトだって。」
「てか、声ヤバくね。」
途端にあちらこちらから聞こえてくる不満。
すいませんでしたね。絶世の美女でなくて。
文句でも不満でも何でも言えばいい。
私はもう、昔の私じゃないんだから。
先生に指された一番窓際の奥の席に着くと、荷物を片付けるまでクラス中の視線が自分に注がれていた。
ま、最初なんてこんなもんだ。
『お前ブスのくせに図々しいんだよ!!』
『引っ込んでな!嘔吐さん♪』
『あっははははは!!』
あぁ、また……。
嫌なことを思い出した。
中学の時の悲惨な記憶。
不安な時、過去が私を襲う。
まるで現実を突きつけるかのように。
荷物を整理していると、隣の席が空いていることに気づいた。
まだ来てないのかな。
そんな事を思っていたら突然誰かに机をバンッと叩かれた。
…え……?
おそるおそる顔を上げると怖い顔をした男子生徒が私を睨みつけていた。
「お前、誰だ」
いやお前が誰だーー!!
なんなのこの人!いきなり失礼すぎじゃない?!
「わ、私は転校生の大戸結衣ですが……。」
「転校生?」
気がつくと、戻りかけていたクラスメイトの目がまたもやこちらに向けられていた。
「広瀬くん!威嚇しないで席に着いて!」
先生がそう言うとその広瀬とやらは机から手を離し、席に座っ・・・
って……
隣?!隣なの?!ウソでしょ!!
ありえない!!