「ぐはっ」
え……?
誰かが殴られた音がしたから、そっと目を開ける。そこには、ボコボコにされているはずのケイタの姿があった。
「ケイタっ!」
気色悪い男の人はのびていた。
「バカチカ」
ケイタはそっと抱き締めてくれた。安堵したせいか、ぽろぽろと涙がでてきてとまらない。
「なんでやられっぱなしなわけ?股間でも蹴ってやればいいのに」
「だ、って……。脅されたんだも、ん」
「は?なんて言われた?」
「ケイタをボコボコにするって言われた」
ケイタはハア、と溜息をついた。なんか変なこと言ったのかな……?
「あのなぁ、チカ。殴られるのは、いつか治る。怪我だしな。けどな?傷ついた心はすぐには治せないんだよ」
やや怒り口調ではあるが、いつもより優しさが混じっていて、小さな子供を慰めるような感じ。
「分かる?チカ」
「う、ん」
すると、ケイタは体を離した。


