女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 こいつ、のところでもう一人の男のほうへ頭を動かした。その時、私は気付いた。

 ハッとしたけど、一瞬で理解した。

 細川を見て、即答する。

「嫌よ」

 途端にシュッという音と共に白い光りが舞い、左腕に痛みが走った。

 切られた、と気付いて腕を掴む。

 左腕の切られたところから、血がゆっくり手を伝って地面に落ちたのがわかった。

 この寒い倉庫の中で、私の血だけが温度をもっているかのようだった。

 ・・・あーあ・・・。と心の中で呟いた。・・・このコート、高かったのに・・・。

「・・・次は、そのキレーな顔だ」

 細川の声が響く。

「脱げ」

 痛みをこらえる必要はなかった。アドレナリンが出ていて私は興奮状態だった。

 後で痛むことは判っていたけど、それだって生きていたらの話だ。私は無意識に唇を舐め、小さく微笑してから、声を出した。

「まだ、駄目よ」

 ハッキリと声を出したので倉庫内に響いた。

 一度ビクッと反応した細川が、口元を歪めてナイフを振りかざす。私はそれを見ながらまたいきなり言った。

「もう一人はどうしたの?」

 細川は体を止めて目を見開いて、周囲を見渡す。いつの間にか、もう一人の男は消えていた。優勢に酔いしれて、相棒が消えていることに気がつかなかったのだろう。