こいつ、のところでもう一人の男のほうへ頭を動かした。その時、私は気付いた。
ハッとしたけど、一瞬で理解した。
細川を見て、即答する。
「嫌よ」
途端にシュッという音と共に白い光りが舞い、左腕に痛みが走った。
切られた、と気付いて腕を掴む。
左腕の切られたところから、血がゆっくり手を伝って地面に落ちたのがわかった。
この寒い倉庫の中で、私の血だけが温度をもっているかのようだった。
・・・あーあ・・・。と心の中で呟いた。・・・このコート、高かったのに・・・。
「・・・次は、そのキレーな顔だ」
細川の声が響く。
「脱げ」
痛みをこらえる必要はなかった。アドレナリンが出ていて私は興奮状態だった。
後で痛むことは判っていたけど、それだって生きていたらの話だ。私は無意識に唇を舐め、小さく微笑してから、声を出した。
「まだ、駄目よ」
ハッキリと声を出したので倉庫内に響いた。
一度ビクッと反応した細川が、口元を歪めてナイフを振りかざす。私はそれを見ながらまたいきなり言った。
「もう一人はどうしたの?」
細川は体を止めて目を見開いて、周囲を見渡す。いつの間にか、もう一人の男は消えていた。優勢に酔いしれて、相棒が消えていることに気がつかなかったのだろう。



