女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 私は傲慢に顎を上げて口を開いた。

「・・・あんたがどれだけバカなのかを一々誇張してくれなくても、十分判ってる。てめえなんかに何が出来るのよ。私は、あんたなんかよりもっと性質の悪い男と2年も付き合ってたのよ」

 まあ、それだって自慢にはならないが。

 変な目つきのまま、嗤うのをやめた細川が少し首を傾けた。

 すると、もう一人の男が私を見て軽く笑った。そして細川に、どうぞ、というように手を振った。それに頷いた細川が、前に一歩出て私に近づく。

「これでも」

 細川が言った。

「まだ軽口が叩けるか?」

 手には、鈍く光るアーミーナイフが握られていた。


 ・・・・・マジで。


 私は、正直なところうんざりした。うんざりが強すぎて恐怖心が沸かなかったくらいだ。

 私はまだ30歳なのよ。この3ヶ月でナイフを突きつけられるのは2回目ってどういうことよ・・・。

 そして現実感の戻らない頭で、そういえば今年は前厄だったわ、などと考えた。・・・お祓い行かなかったからかな・・・おそるべし、神仏の力。生きて戻れたら、必ずお祓いにいこう。

 私はため息をついて、嫌々口を開いた。

「・・・バーカ。ねえ、格言を教えてあげるわ。“バカにつける薬はない”。あんたみたいな脳無しに何言ったってイミないんでしょ」

 軽口どころか暴言を受けて、細川の上半身が微かに揺れた。

 今では嗤わずに、ただギラギラと私を睨んでいる。

「――――――・・・・本当に口の減らないクソ女だ。もうお喋りはいい。こいつを楽しませてやってくれ。・・・脱げ」