薄笑いを浮かべていた。犬・・・・桑谷さんのことか。そこで、ううーん、まあ、確かに犬っぽい、とか考えてしまった私は罰辺りなんだろう。
鞄から携帯を出してバカ野郎に渡す。
それを自分のポケットに入れると、ストーカー野郎は後ろも振り返らず歩いていく。私もほどほどの距離をあけて歩き出した。
自分のアパートを通り過ぎて、その先の今は使われていない無人の小さな倉庫へ入っていく。建築会社の倉庫だったようだけれど、会社がつぶれてからはそのままで放置してある、町の懸念案件の場所だ。
どうやって鍵をあけたのだろう。歩いていくやつの背中を睨みながら、じっと考えた。
ガランとした倉庫内を真ん中の辺りまで進んで、細川が向き直った。
「・・・君に紹介したい人がいるんだ」
小さな声ががらんどうの倉庫に響く。
隙間風が入っているのかえらく寒くて、私は少し身震いした。肩にかけたショルダーバックを握り締める。
暗がりから、男が一人出てきた。
無表情でこっちを見詰めながら近づいてくる。中肉中背で、少し長めの髪をしていて上から下まで真っ黒な服装をしていた。
特に捉え所のない特徴のない顔だった。すぐ忘れそうな。
細川が楽しそうに言った。
「こちら、ストーカーさん」
「――――――は?」
思わず出た私の声も、高い天井に反射して響いた。
細川はケラケラと笑って、ぐるんと目を回して見せた。



