女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



「・・・冗談は顔だけにしてよ」

 私が低く言った言葉に、男は顔をしかめる。

「・・・・本当に失礼な女だな。その顔で。一種の詐欺じゃないか?」

 そして一度舌打ちをしてから、顎を上げて傲慢な顔で笑った。

「――――君の店の店長、福田さんって言うんだね」

 私は表情を消した。

 ・・・・・何を言っている、この男・・・。

 前でニヤニヤ薄笑いを浮かべたまま、男は小さな声で続ける。

「可愛い娘さんがいるんだ。小川さん知ってる?今年の新入社員で、〇〇会社に勤めている」

 相変わらず小さな声でストーカー野郎は続けた。

「・・・君が来ないなら、彼女に乗り換えるよ」

 有効的な脅しだ。

 私はじっくりと目の前の男を睨んだ。

 お得意の行動を福田店長にもしたんだろう。そして家まで着いていき、娘さんの存在を知った。多分、そんなとこ。

 ・・・・なんてこと。私のせいで、店長にまで。


 店長の笑顔が瞼の裏に浮かんだ。

「どうする?一緒にくる、それともやめる?」

 体から緊張を抜くために、そっと息を吐き出した。

「行くわ」

 私の答えに頷いて、細川が近寄ってきた。

 そして私に手を出して、軽く振った。

「携帯、預からせてもらうよ。犬に連絡されちゃ迷惑なんでね」