女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 6時過ぎだというのにすでに真っ暗だった。トレンチコートを合わせてマフラーをしっかりとまく。

 寒い・・・。でもあと5分くらいで、私の部屋―――――――

 その時、足音に気がついた。

 ハッとして立ち止まる。

 前方から響いて近づいてくる足音が、街灯の下まで来てから止まった。

「・・・小川さん、お疲れ様」

 私は目を細めて、街灯に照らし出された顔を見詰める。

 同じくらいの背の男が柔らかく微笑んで立っていた。

「・・・・・細川」

 私の呟きに、ふふふと笑った。

「いきなり呼び捨てとは失礼だな。一応、君より年上なんだけどね」

 ・・・・え、マジで。と思ったけど、そんな反応をしている場合じゃない。

 やっぱり見たことがあった。あの配送客の男だった。柔らかい表情で立っているけど、目が笑ってない。その目の感じにぞっとした。

「・・・今日は彼氏もいないみたいだから、出てきてみたんだ。一緒にきてほしいんだ、君に」

 なんてこと。こんな時に。

 そして、気付いた。

 こんなタイミングがあるわけ、ない。桑谷さんの部屋の火事は――――――――――