女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



「あなたは警備会社にもいたのよね、お見通しか」

 人間の弱点の一つである、鼻。ここを潰すと簡単には血は止まらない。しかも、激痛を伴う。

 彼は苦笑して、両手を開いて後ろに倒れこんだ。

「・・・だが、このザマだ。おめでとう、君は無事に逃げ切れた」

「女相手で油断したんでしょう?男相手なら、あんなことにはならないと思う」

 すると桑谷さんは顔だけを起こして首を振った。

「相手を見くびってちゃんと備えてないのが一番駄目なんだ。それに、俺は別に手加減してない」

 褒め言葉として受け取っておくことにした。

「・・それは、どうも」

「参考までに聞くが、あの後どうするつもりだったんだ?俺がギブアップしなければ」

 私は彼の股の間を指差した。

「潰れるまで踏みつける」

 彼は痛そうに顔を歪めて、小さく悲鳴を上げた。そして守るようにうつ伏せに転がる。

「・・・あぶねー」

 私は鼻で嗤って言ってやった。

「女を襲おうとかする男にはそれ位しないと。神社で斎に襲われた時も、チャンスがあればそうしようと考えてたのよ」

 桑谷さんが脱力した。

「・・・そこを、俺が邪魔したんだな」

「助けて貰ったと思ってるわよ」

「・・・どうも」

 拗ねたようだ。まったく、男は面倒臭い。

 斎のバカはただ単に私を襲ったわけではない。殺そうと思っていて凶器まで持っていたんだから、あの時桑谷さんが来てくれたのは本当に有難かったのに。

 でも一々説明するのが面倒だった。