「あなたは警備会社にもいたのよね、お見通しか」
人間の弱点の一つである、鼻。ここを潰すと簡単には血は止まらない。しかも、激痛を伴う。
彼は苦笑して、両手を開いて後ろに倒れこんだ。
「・・・だが、このザマだ。おめでとう、君は無事に逃げ切れた」
「女相手で油断したんでしょう?男相手なら、あんなことにはならないと思う」
すると桑谷さんは顔だけを起こして首を振った。
「相手を見くびってちゃんと備えてないのが一番駄目なんだ。それに、俺は別に手加減してない」
褒め言葉として受け取っておくことにした。
「・・それは、どうも」
「参考までに聞くが、あの後どうするつもりだったんだ?俺がギブアップしなければ」
私は彼の股の間を指差した。
「潰れるまで踏みつける」
彼は痛そうに顔を歪めて、小さく悲鳴を上げた。そして守るようにうつ伏せに転がる。
「・・・あぶねー」
私は鼻で嗤って言ってやった。
「女を襲おうとかする男にはそれ位しないと。神社で斎に襲われた時も、チャンスがあればそうしようと考えてたのよ」
桑谷さんが脱力した。
「・・・そこを、俺が邪魔したんだな」
「助けて貰ったと思ってるわよ」
「・・・どうも」
拗ねたようだ。まったく、男は面倒臭い。
斎のバカはただ単に私を襲ったわけではない。殺そうと思っていて凶器まで持っていたんだから、あの時桑谷さんが来てくれたのは本当に有難かったのに。
でも一々説明するのが面倒だった。



