「・・・・細川が挑発に乗って、君を襲ったらどうするんだ?」

 私は無邪気な顔を作って答えた。

「勿論、逃げるのよ」

 すると彼は口を歪めて、皮肉に笑った。そして吐き捨てるように言ったのだ。

「・・・・逃げる?気が狂った男から逃げる?―――――――やってみろよ」

 そして次の瞬間、いきなり私を押し倒した。

 凄い勢いで拘束され、私の両手は頭の上で彼の片手に結ばれる。体重をかけて乗られて身動きが叶わなかった。

 倒れこんだ私の顔の間近に自分の顔を寄せて、眉間に皺をよせた彼が口元だけで嗤った。

「・・・襲われるっていうのは、こういうこともあり得る。さあ、どうやって逃げんだ?」

 私は手首の痛みに顔を顰めながら、不機嫌で凶暴化した彼を見上げて言う。

「・・・・可愛い子ぶったらいいの?」

 彼は目を細めたままで、しばらく止まった。そして怪訝な顔で聞く。

「どういう意味だ?」

 私は両腕に力を入れたり体を捻ったりしてから、無理、駄目、などと言って、それから彼を見上げた。

「―――――――・・・今のが可愛い子ぶる?」

「そう」

 彼は首を少し傾げて言った。

「・・・・ってことは、本来の君なら?」

「やってもいいの?」

「勿論」

 私はにっこり微笑んだ。

「じゃあ、あなたも本気を出して襲ってみて」