女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~



 ・・・・・最初に彼に抱かれた時も、ホテルのこんな部屋だった。

 寝ている男の寝息に安心して、自分が寂しく悲しかったのが判ったんだ。

 しばらく彼を見ていて、それから立ち上がった。カーテンは閉めなかった。明日の海から昇る朝日が見たかった。

 彼の隣には滑り込まず、もう一つのベッドのシーツをはがす。

 今晩は、一人で眠る。私はそれも、渇望していた。



 柔らかい感触を瞼に感じた。

 温かい何かにつつまれたようだった。


 ゆっくりと、少しずつ目を開けていく。

「・・・うん?」

 何かが私を抱きしめていた。ハッといきなり覚醒して、身を起こそうともがいた。ただし、ガッチリと捕まえられていて、それは叶わなかったけど。

「・・・あれ、起きちゃったか」

 耳元で低い声が聞こえた。

 大きな手がお腹から擦り上がって、私の胸を柔らかく包む。耳朶と首筋に唇の感触。私はもがくのを止めて、力を抜いた。

「・・・ごめん、我慢出来なくて」

 桑谷さんが同じシーツの中に入っていた。そして後ろから私を抱いている。

「・・・おはよう。一体、いつの間に・・」

 私は呟いて、体を捻って彼の方へ顔を向けた。

 夜が明けたばかりみたいだった。部屋は薄明るく、窓の方からまだ弱い光が差し込んでいる。

「・・・・さっき。起きたらベッドに一人で驚いた。隣のベッドに寝てると思ってなくて」

 私は欠伸をしながら言い訳をする。昨日はあなた本当に疲れてるみたいだったから、と。